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夜、暗い部屋でスマートフォンの青白い光だけを頼りに、手元を見つめる様子

— ある夜の記録から

午前3時、
明細を下まで
見られなかった。

その夜の日記 また会いに行くために、いくら払ったんだろう。
数えるのが怖くて、そのまま画面を閉じた。
「今日で最後にする」——その“最後”を、
私はいったい、何度くり返しただろう。

これは、誰にも言えなかった夜を、
消さずに残した、ひとりぶんの日記です。

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同じ夜を知っているあなたへ

「今回だけ」——私も、
ずっとそう思っていた。

——その夜を、あなたはもう、何度くり返してきたでしょう。

あの頃の私に、いちばん言ってあげたいことがあります。 それは、あなたの心が弱かったからじゃない、ということ。 気づいたら抜け出せなくなっているように、 そういうふうに、うまく出来ていただけなんです。

もう少し払えば、きっと返ってくる気がする。 ここまで使ったんだから、今やめたら全部むだになる。 ——その「むだにしたくない」という気持ちこそが、 いちばん私にお金を使わせていた、と今なら分かります。

続けることで守っていたのは、その人でも、思い出でもなくて、 「まだ取り返せるかもしれない」という、たった一つの願いだけでした。

雨の夜、窓の外の街灯の光を、部屋の中からひとりで眺めている様子
窓の外を見ていた、眠れない夜のこと。

抜け出せた日のこと

抜け出す方法なんて、なかった。
あったのは、一晩に一行だけ。

抜け出せた日、特別なことは何もしていません。 ただ毎晩、眠る前に、その日の気持ちを一行だけ書きました。 「今日、いくら使いたくなったか」ではなく、 「今日、何がさびしかったか」を。

家計簿アプリでも、強い意志でもありません。 アプリは三日で閉じてしまうし、意志は夜になると溶けていく—— あなたも、たぶん知っていますよね。 これはただ、一晩に一行だけを、 ちゃんと続けられるように組み立てた、記録の仕組みです。

あの夜からでした。 私が、明細ではなく、自分の気持ちのほうを 書きはじめたのは。 続けているうちに、“払わないと会えない人”の輪郭が、 少しずつ、少しずつ薄くなっていったんです。 通知が鳴っても、心臓より先に指が動く—— あの感覚が、いつの間にか消えていました。

夜、卓上ライトの温かい光の下で、開いたノートにペンを置いている手元
眠る前の、たった一行。

夜の記録 ── その一 たった一行から、指が止まる夜が増えていきました。
その、はじまりの夜のことを、もう少しだけ。

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日記のなかみ

この日記に、
書いてあること。

  • 一番底まで沈んでいった、あの夜そのものの記録
  • 「もう最後」を何度もくり返していた頃の、正直すぎる独り言
  • 眠る前の、たった一行の習慣ができるまでの日々
  • 通知が鳴っても、指が止まるようになっていった記録

すべて、その時に書いた言葉のまま。 きれいにまとめた“教科書”でも、誰かを教える本でもありません。 ただ、同じ夜を過ごしている人に宛てた、一人ぶんの日記です。

読むのは、あなただけ

誰かに見せるための
ものじゃない。

読むのは、あなたの手のなかのスマホで。 夜でも、布団のなかでも、続きはいつでもそこにあります。

表紙にも、タイトルにも、通知にも、 “あの夜のこと”は、どこにも出てきません。 誰かがのぞいても、気づかれるようなものは、何ひとつありません。

一生続ける約束でもありません。書くのは、たった一行。 どこまで読むか、どこまで続けるかは、あなたが決められます。 だから、急がなくていいんです。

——では、あなたの最初の一行は、 どんな夜に、書かれるのでしょう。

夜、ベッドの中でスマートフォンを手に持ち、静かに画面を見ている手元
あなたの、静かな時間のなかで。

夜の記録 ── その二 書くのは、たった一行。
それがいつしか、明細を閉じられる指になっていきました。

最後に、ひとつだけ

これは、あなたが恐れている
“次の一行”じゃない。

あの夜、明細を下まで見られなかったのは、 そこで増えていく数字が、こわかったから。

この一行は、その数字を増やす側のものじゃありません。 そっと閉じるための、一行です。 会いに行くために払ったお金とは、反対のもの—— 自分に、もう一度会うための記録です。

だからこれは、「また使ってしまった」の続きではなくて、 その続きを、ここで終わりにするためのものです。

同じ夜を知っている、あなたへ

方法は、一晩に一行。
それだけでした。

むずかしいことは、ひとつもありません。 今夜の、あなたのたった一行から。 ——その最初の一行は、もう、あなたのものです。

追伸。
もし今、明細を開くのが怖い夜を過ごしているなら。 この日記は、あの頃の私のような誰かのために、 書いたのかもしれません。

急がなくて大丈夫です。あの夜のことは、 あなたが読みたいと思った時に、そのまま、静かに待っています。 ── 同じ夜を過ごした、ひとりより。
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